「傘寿まであと10日だね」。元気で80歳の誕生日を迎えられる幸せと感慨にふけっていた。
その夜、妻が倒れた。救急車のお世話になって緊急入院。
以後、ベットに付き添うため朝に夕に病院通いをしている。
今夜は「あと1週間だね」と、ひとりわが身に語りかけた。
しかし待てよ。傘寿って何だ。
傘の略体「仐」を分解すると、八と十になるからだという。
ずいぶんとこじつけた乱暴な説明だ。
現役時代は、書くことを、もちろん漢字も大事にしてきただけに悲しくなる。
そういえば、まだあるぞ。
「喜」の草書体が七十七のように読めるから「喜寿」。
八十八も「米」を分解したもので「米寿」という。
90歳を「卒寿」というのは「卒」の略体「卆」を分解してごらん、九と十になるだろ、っていう。
こんどは引き算。百から一を引けば白になるから「白寿」。百歳の1年前、つまり99歳のこと。
八十一が「半寿」。百歳を「上寿」。108歳は「茶寿」。百十一歳は「皇寿」…。かなり無理してる。
腹立ちまぎれに脱線したが、素直に「傘寿」を喜ぼう。
人口3万人余のサンマリノ共和国の男性の平均寿命は80歳で世界一位だそうだ。
日本は79.64歳で世界第4位。ミイラになっていた名ばかり高齢者がいるからアテにはならない。
なにはともあれ、35年まえに他界した亡父が74歳だったから、親を超えたことにも感謝しよう。
当て字や足したり引いたり、分解したりの漢字にまどわされず、
「七珍万宝の髄一は人の命と人の誠」のことわざにもあるように、
私の座右の銘「誠心誠意」で、これからも生きていこうと思う。